薬害イレッサ事件とは

1 未曾有の副作用被害

肺がん治療薬イレッサ(一般名:ゲフィチニブ、製造販売アストラゼネカ社)の副作用によって多くの患者が間質性肺炎を発症し、死亡した事件です。
イレッサは、2002年7月、申請から5ヶ月という異例のスピードで世界で初めて日本で承認されました。
承認前から副作用が少ないと宣伝されましたが、2011年9月までに公式発表だけでも834人が副作用である間質性肺炎で死亡しました。
特に初期の頃に死亡者が集中しており、承認から半年で180人、1年で294年が亡くなっています。
この死亡者数は、他の抗がん剤より著しく多く、イレッサの間質性肺炎による最近の副作用死数と比較しても10倍近い死亡者数となっています。
わが国において、これほどの副作用死亡被害を出した薬害事件はありません。

2 加害の構造-承認前の副作用情報等の軽視・誇大広告・不十分な警告

このように被害が発生・拡大したのは、承認前の動物実験、国内外の臨床試験、EAP(拡大治験プログラム)による国内外の使用患者において、致死的な間質性肺炎の発症を示す情報が蓄積され、死亡者が出ていたにもかかわらず、アストラゼネカ社が、利潤追求のために安全性を軽視して、承認前から、「副作用の少ない抗がん剤」という宣伝広告を行ったうえ、添付文書等における十分な警告などの安全性確保措置を怠ったからです。
また、市販直後から間質性肺炎による副作用死亡報告が相次いでいたにもかかわらず、緊急安全性情報の発出などの対策も遅れました。

3 加害の構造-広すぎる適応・慎重さを欠く対応

抗がん剤の有効性を評価する真の指標は延命効果ですが、イレッサは、当時のガイドラインに基づいて、市販後に第Ⅲ相臨床試験で延命効果を証明することを条件として、腫瘍の縮小反応のみに基づいて承認されました(現在は、原則として承認前に、延命効果を証明することが必要とされています)。
世界初の承認で、しかも有効性に未解明の点が残ったまま市場に出すのですから、がん患者の命の安全を確保するために、慎重な対応が必要でしたが、全例調査をつけず、医療機関についての限定さえしませんでした。
市販後、製薬企業は、承認条件とされた第Ⅲ相臨床試験で延命効果の証明に失敗し、その他にも国内外で7つの第Ⅲ相臨床試験が実施されましたが、日本人について延命効果を証明できたものはありません。
米国では2005年から新規患者への投与が禁止されています。EUでは、2005年に一度承認が取り下げられた後に、2009年になって再申請され承認されましたが、EGFR遺伝子変異のない患者への投与は認められていません。
日・米・欧の中で、日本だけが広い適応を認め続け、EGFR遺伝子変異陽性の患者に適応が限定されたのは、2011年10月になってからでした。

4 責任を明確の明確にして謝罪・賠償し、教訓を生かすべき

今、医療現場で、医師や患者が間質性肺炎に警戒してイレッサを使用しているとすれば、それは、多くの犠牲者が身を持ってイレッサの危険性を示したからであって、アストラゼネカ社や国が進んで責任を果たしたからでありません。
正しい情報が提供されず、副作用が少ない抗がん剤と信じてイレッサを服用した患者が、筆舌に尽くしがたい苦しみを受け、多数亡くなっていった被害者・遺族に対して、企業と国が責任を認めて、謝罪し、賠償をするのは当然です。
2010年4月、厚生労働省の「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」は、薬害再発防止に関する「最終提言」をまとめ、厚生労働大臣はその実行を約束しましたが、薬害イレッサ事件において、国と企業の責任が問われないこととなれば、制度改革は後戻りし、薬害防止はできません。
薬害イレッサの教訓を、がん医療体制の整備や薬害防止に生かし、抗がん剤の副作用死を対象とする救済制度を創設するために、薬害イレッサの全面解決に力を貸してください。

ページの先頭へ