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薬害イレッサ訴訟Q&A

薬害イレッサ訴訟原告弁護団

1. 「イレッサ」とは

「イレッサ」は、2002(平成14)年7月に承認された「手術不能又は再発非小細胞肺がん」を適応とする内服の抗がん剤です。この年の1月、新しいタイプ(作用機序)の分子標的薬としてアストラゼネカ社が承認申請を行い、5か月あまりの異例のスピード審査により、世界に先駆けて日本で承認されました。
販売開始直後から、イレッサを服用した患者から間質性肺炎による副作用死亡報告が相次ぎました。

2. イレッサの副作用である「間質性肺炎」とは

間質性肺炎とは、普通の肺炎とは全く違う病気です。一旦発症すると、呼吸困難による強い苦痛をもたらし、死亡することもある危険な病気です。間質性肺炎は様々な原因で起こりますが、抗がん剤など薬剤の副作用として起こること、抗がん剤の副作用のうち最も注意すべき危険な副作用の一つであることは、イレッサの承認前から分かっていました。イレッサの副作用で間質性肺炎になった人の4割近くが亡くなっています。

3. イレッサの副作用で、どれくらいの人が亡くなっているのですか

イレッサの販売開始の直後から間質性肺炎の副作用死亡の報告が相次ぎ、その数は、2010(平成22)年9月末現在で819人となっています。
特に、販売当初の死亡者が多く、副作用死亡報告数は、以下のように2002(平成14)年7月の販売開始からわずか半年で180人、2004(平成16)年末までの2年半で557人にも達しています(2003(平成15)年6月までの1年で294人に達しています)。

2002(平成14)年:180人(7月から12月)
2003(平成15)年:202人
2004(平成16)年:175人
2005(平成17)年:80人
2006(平成18)年:52人
2007(平成19)年:38人
2008(平成20)年:44人
2009(平成21)年:34人
2010(平成22)年:14人(1月から9月)

イレッサの副作用死亡は日本に際だって多く、欧米ではこのような多数の副作用死亡などは報告されていません。

4. 強い副作用がつきものとされる抗がん剤では、死亡もやむを得ないのでは

抗がん剤だから、副作用で死ぬことがあっても仕方がないと安易に言うことは誤りです。少しでも生命を延ばすために、辛い副作用に耐えて抗がん剤治療を行うがん患者の生命の重さを考えなければなりません。
医薬品総合機構のホームページでは、2004(平成16)年度から薬の副作用報告の全例公開を始めています。その2004年度で見ると、多数の患者に使用されている標準治療の抗がん剤による肺がん患者の副作用死亡報告数は、それぞれ数人から多くても10数人です。他方、イレッサによる副作用死亡報告数は140人に及んでいました。
イレッサの副作用死亡数は、他の抗がん剤と比べても桁違いに多く、抗がん剤のやむを得ない副作用とすべきではない甚大な被害です。十分な対策がとられていれば防げた副作用死は、やむをえない死亡などではないのです。

5. 国は、イレッサの危険性について十分な審査をしたのでしょうか

承認に先立って、国がイレッサの危険性について十分な審査をしたとは言えません。
裁判で、国は、承認前のイレッサによる間質性肺炎発症例として、臨床試験とそれ以外の使用を合わせて合計10例を認めています。しかし、そのうち審査期間中の副作用報告3例については、審査報告書にも記載せず、審査手続の一環として開催された専門家らによる審議会でも一切報告されませんでした。この中には日本人の死亡報告も含まれていました(死亡報告の無視)。
また、上記10例のうち5例までが日本人であったにもかかわらず、このことを重く受け止めて検討した形跡もありません。
更に、審査にあたって、イレッサについて多数報告されていた副作用症例報告について病名だけでチェックしたために、少なくとも、イレッサによる典型的な間質性肺炎発症例と把握すべき10例を見過ごしていたことも、裁判で明らかになっています(副作用症例の見過ごし)。
これらだけからも、国が、イレッサの承認にあたって、間質性肺炎の危険性について十分な審査をしたとは全く認められません。

6. アストラゼネカ社は、販売前に十分な危険性の検討を行ったのですか

アストラゼネカ社も、イレッサの販売に先だって、その危険性を十分に検討したとは言えません。
動物実験で示されていたイレッサの危険性のシグナルを軽視した他、多数の副作用症例を把握していたにもかかわらず、イレッサによる間質性肺炎の副作用を認めることに消極的な姿勢に終始していました。
そればかりか、アストラゼネカ社は、承認前から、医師向け雑誌の提供記事や小冊子、マスコミ向けプレスリリースなど様々な方法での宣伝により、イレッサが「分子標的薬」として副作用の少ない画期的な新薬であるとの情報を広めていました。これらにおいて、危険な間質性肺炎の副作用については一切触れていませんでした。

7. 副作用の警告など、販売当初の安全対策は十分だったのでしょうか

販売開始時やその後の安全対策も全く不十分でした。
イレッサ販売開始の当時、肺がんの標準治療薬とされる他の抗がん剤の「添付文書」では、冒頭の「警告欄」に赤い大きな文字で副作用について注意がなされ、使用できる医師や医療機関の限定などの指示もありました。
しかし、当初のイレッサの添付文書には警告欄自体がなく、間質性肺炎の副作用は2ページ目の目立たない場所にわずかに記載されていただけでした。使用できる医師や医療機関の限定も全くありませんでした。
アストラゼネカ社の承認前からの宣伝により、医療現場にはイレッサについて副作用の少ない「夢の薬」との期待が広がっており、そのような現場への注意喚起として、当初の添付文書は全く不十分でした。
その結果、イレッサの安全対策は後手に回り、添付文書の度重なる改訂を余儀なくされています(現在第19版)。

また、承認前に分かっていた危険性を考えれば、市販直後から副作用報告が相次いだにもかかわらず、販売開始から3ヵ月も後の時点で、副作用死亡が13例報告されたとして初めて「緊急安全性情報」を出したことも、遅きに失した対応でした。

8. イレッサの死亡率は減っているのでしょうか

減ってきています。このことは、販売当初から安全対策を適切に行えば、死亡者を減らせたことを示しています。
イレッサの場合は、販売開始から1年半以上もの間、使用患者実数が全く分かりませんでした。アストラゼネカ社は、厚生労働省の検討会で、その間の推定投与患者数を8万6800人と報告したものの、すぐに半数以下の4万2000人に修正するなど、根拠のある数字は全く明らかになっていません。
販売開始から約1年後に始まった特別調査(プロスペクティブ調査)では、2.5%という死亡率が明らかとなっています。イレッサの危険性が明らかとなって一定の対策がとられるようになった時期の調査であることを考えれば、当初の死亡率は更に高いものだったと考えられます。
最近の状況について、最新の数字は公表されていませんが、2007(平成19)年の副作用死亡報告数とアストラゼネカ社の報告による新規処方患者数から単純計算した死亡率は0.5%程度となります。
このように、イレッサの副作用死亡率は、販売後の安全対策を繰り返しながら、5分の1ないしそれ以上に減少してきていると考えられます。

9. イレッサの日本人に対する有効性は明らかになっているのでしょうか

いまだ明らかにはなっていません。
他の医薬品と同様、抗がん剤も、有効性があるというためには大規模な比較臨床試験(第3相臨床試験)による確認が必須です。通常の医薬品は承認前に有効性を確認しますが、抗がん剤の場合、患者のために早期に市販を認めるということから、ガイドラインによって、市販後に第3相臨床試験を行って有効性(延命効果)を確認することも認められていました。
しかし、イレッサは、その承認にあたって承認条件とされた日本国内の第3相臨床試験(V1532試験)で延命効果の証明に失敗しました。
海外で見ても、INTACT1・2試験、ISEL試験、SWOG0023試験と失敗を繰り返しました。
なお、最近、海外のINTEREST試験、アジアでのIPASS試験、日本でのNEJ002試験結果などによりイレッサの有効性が論じられています。しかし、INTEREST試験はV1532試験と同様のデザインであり、上述のとおり日本ではこのデザインの試験で延命効果は認められなかったのです。
また、IPASS試験は肺がんの種類(腺がん)や非喫煙者など、イレッサの効果が期待できると想定されていた因子で対象者を絞り込んだ試験であり、日本人の適応患者全体に対する有効性を推論できるような試験ではありません。これは、EGFR遺伝子変異陽性患者に絞ったNEJ002試験も同じです。
承認から8年が経過した現在でもイレッサの日本人患者全体への延命効果は明らかになっていません。そして、V1532試験の結果を覆すような国内の第3相臨床試験は、もはや計画されていないというのが現在の状況です。

10. イレッサは、人によってはよく効くという話を聞きましたが

近年、特定の遺伝子変異がある患者へのイレッサの効果が議論されています。
有効性の確認には、そのような患者を対象にした適切なデザインの臨床試験(第3相)を行い、延命効果を調べることが必要です。しかし、日本でのNEJ002試験なども、腫瘍縮小の期間を第1の評価指標として行われた試験であり、患者の全生存期間を第1の評価指標として延命効果が確認された試験結果は未だ出ていません。
他方、遺伝子変異のない患者には、腫瘍の縮小すらほとんど見られないことは明らかとなっています。

11. イレッサは、世界で広く使われているのですか

世界的に医薬品規制をリードしているのは、米国・EU・日本の3極の規制当局と製薬産業界の代表で構成されるICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)とされています。
そのうち、アメリカでは、日本人のような副作用が認められないこともあって、いったん承認がなされましたが、第3相臨床試験の失敗を受けて2005(平成17)年6月から新規患者への投与が禁止されています。
同様に、EUでは、2005年1月にイレッサの承認申請が取り下げられました。その後、EUでは、上述のINTEREST試験やIPASS試験をふまえた再承認申請を受けて、2009(平成21)年7月にイレッサが承認されましたが、遺伝子変異のある患者に絞り込んだ承認です。
なお、遺伝子変異のある患者の割合は、東洋人で3割程度、非東洋人で1割程度と言われています。
国内第3相臨床試験で失敗しているにもかかわらず、広い適応での販売を認めているのは、日・米・EUの三極のうち日本だけという状況です。

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