裁判所勧告を受けた国のコメントに対して

2011年01月09日

 2011年1月7日の大阪・東京両地方裁判所の和解勧告に対して,国(厚生労働省)の様々なコメントが報じられています。しかし,いずれも全く理由がなく,責任逃れを図るものとしか評価できません。改めて,私たちがめざす解決とともにQ&Aとして整理します。

 

Q 裁判所の和解勧告を受けて,国は,「副作用が全てわかるまで承認できないとすれば,抗がん剤が承認されなくなる」,「副作用が有効性より重視されるということになれば,医薬品の承認の在り方に影響を与える」,「イレッサの承認が問題となれば,他の新薬で慎重にならざるを得なくなる」などと言っているようですが,薬害イレッサ事件を解決すると抗がん剤が承認されなくなるのでしょうか。

A そのようなことはありません。和解勧告は,イレッサの承認が違法である(早すぎた)と言っているのではなく,承認前に得られていた副作用情報が,医師や患者に十分に提供されていなかったことを指摘しているにすぎません。したがって,勧告の考え方によったとしても,承認の時点でわかっている副作用情報を医師・患者にきちんと提供すれば足りるのであり,承認が遅くなってしまうわけではありません。
 国のコメントは,裁判所の勧告内容をゆがめて批判し,いたずらに患者の不安を煽るものであって,極めて不当です。

 

Q 国は,「承認後に分かった内容で承認時の責任が問われるならば,薬事行政の根幹を揺るがす」とも言っているようですが,そのようなことがあるのでしょうか。

A 前の回答でも説明したように,勧告は承認時に分かっていた副作用情報の医師・患者への提供が不十分だったことを指摘しているのであって,「承認後に分かった内容」で承認時の責任を指摘しているのではありません。このようなコメントは極めて不当です。
 また,「薬事行政の根幹を揺るがす」というコメントは,大げさな抽象論で危機感をあおって責任免れをしようとする国の常套手段です。国は,薬害肝炎事件でも,和解前に「これで国の責任が認められたら薬事行政が成り立たなくなる」と言っていました。しかし,和解後は,国に検証・再発防止委員会が設けられ,その最終提言に基づいて「薬事行政を監視する第三者組織」の新設を含む薬事行政の改革が進められることになっています。
 薬害事件で国の責任を明らかにすることが,薬事行政を前進させるのです。

 

Q 原告は,薬害イレッサ事件についてどのような解決をめざしているのですか。

A 私たちは,全面解決要求として,被害者・遺族への謝罪と償いとともに,イレッサの効果がないことが明らかとなった患者に対する使用の禁止(承認取消を求めているのではありません),そして,薬害イレッサ事件の教訓を生かした下記の制度改革を求めています。
・抗がん剤による副作用死亡被害救済制度の創設
・がん患者の権利の確立(がん対策基本法への「がん患者の権利」明記など)
・薬害イレッサ事件の検証による薬害の再発防止策の実現
 私たちは,このような制度改革によって,がん患者の権利の確立と薬害防止をめざしています。そのためには,被告らの責任逃れを許さず,真摯に和解協議に応じさせることが今まさに求められているのです。
 ご理解とご支援をよろしくお願いします。

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