最高裁判決に対する薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団声明

2013年04月12日

本日、最高裁判所は、薬害イレッサ東日本訴訟についてアストラゼネカ社の法的責任を否定する判決を言い渡した。これにより、先の最高裁判所の国に対する上告の棄却決定とあわせ、東日本訴訟については、国と企業の責任を否定する判決が確定したことになる。西日本訴訟についても、本日、同様の判断がなされた。2004年の提訴から8年余にわたる薬害イレッサ事件に関する訴訟は終結した。
しかし、販売から半年で180人、2年半で557人もの間質性肺炎による死亡者を出した本事件は、国と企業が防ぎ得た未曾有の薬害事件であったという歴史的事実には変わりはない。
イレッサは、2002年7月、世界で初めて日本で承認された肺がん用の抗がん剤である。企業や国には、承認前から致死的な間質性肺炎の報告がなされていたが、企業は副作用が少ない夢の新薬であるという宣伝を行い、添付文書の警告も不十分であった。その結果、市販直後から間質性肺炎による死亡報告が相次ぎ、承認から3ヶ月で緊急安全性情報の発出と添付文書改訂が行われた。
最高裁はイレッサの添付文書に欠陥はないとしたが、この判断は、添付文書改訂によって、副作用死亡者が如実に減少した事実を説明できない。東京地裁の「医師の1~2人が読み誤ったというのであればともかく、多くの医師が読み誤ったと考えられるときには、医師に対する情報提供の方法が不十分であったとみるべきである。」という指摘こそ正しい。
集団的薬害訴訟において初めて製造物責任が問われた本件では、多くの学者が東京高裁、大阪高裁の判断に問題があるとする意見書を最高裁に提出したが、最高裁は耳を傾けることをしなかった。この最高裁の判断は、将来に禍根を残す過ちである。
本事件については、2011年1月に東京・大阪両地裁による和解勧告による早期解決の機運があったが、厚労省が学会等に下書きまで提供して和解に反対する声明を公表させるなどした結果、和解の機会を失った。その後は、企業に勝訴した大阪地裁判決に続き、東日本大震災直後の東京地裁では国と企業に勝訴する判決を得たが、全面解決の機会が得られないまま控訴となり、真実を直視しない高裁と最高裁の判断を仰ぐこととなった。この経過は残念と言うほかはない。
しかし、訴訟を遂行したことによって、実は既に多くの成果を得ている。何より、訴訟の提起によって被害の悲惨さを伝えたことによって、医療現場でのイレッサの慎重な使用とインフォームド・コンセントが行き渡り、慎重使用を促すための添付文書の改訂が行われた。また、迅速承認でこそ安全対策が重要であることを再認識させ、その結果、抗がん剤の承認においては、使用患者全例登録調査を原則とする運用が定着した。被害者が本件訴訟を通じて行った承認のあり方と安全対策のあり方に関する問題の提起は、薬害肝炎検証委員会提言に反映されるとともに、多くの制度改善を促した。また、被害者が求めていた適応の限定も実現した。
但し、厚労省における検討会の設置を実現させながら、継続して検討となっている抗がん剤の救済制度の創設を始め、実現していない課題も残されている。
被害者は、文字通り骨身を削りながら、がん患者の命の重さを問い、正義を求め、薬害根絶のため、あるべき救済制度のために8年の歳月を闘い抜いたのである。国と製薬企業には、この被害者達の願いを受け止め、未曾有の副作用死を出した薬害イレッサ事件を改めて検証し、その教訓を余すところなく今後に生かす責務がある。
私たちは、引き続き、薬害根絶と救済制度の確立のために力を尽くす所存である。
最後に、これまで本事件について多大なご支援をいただいた方々に心からお礼を申し上げます。

薬害イレッサ訴訟統一原告団・弁護団

 

 

※ 東日本訴訟 上告審判決 (最高裁ホームページより転載)

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